下町情緒が色濃く残る菊水エリア。「旅の始まりは一杯のコーヒーから」というメッセージを込め「HOTEL POTMUM（ホテルポットマム）」に併設しているのがMORIHICO.STAY&COFFEE」。ここはオフィスビル兼倉庫だった建物を丸ごとリノベーション。間仕切り壁を撤去した開放感あふれる空間は、ホテルのフロントとカフェの機能を一体化。あえて自由に行き来できる空間にすることで旅行者たちが自然とローカルカルチャーを体感できるよう計算されている。

初めてこの物件を見たとき目に飛び込んできた、高さ５mの真っ白な壁。「この一面が本棚だったら最高だなぁ」と市川さんは直感したそうだ。現在そこには壁一面、ずらりと蔵書が並んでいる。

郷土料理、旅、キノコ、釣り、自給自足……。旅人目線で並ぶ蔵書のカテゴリーは実に多彩。みんなで共有する理想的な書斎とでもいうべき、まさに「本のワンダーランド」。本好きならずとも心躍る選書を手掛けたのが京都「誠光社」だと知り、さらに胸が高鳴ったのを覚えている。偶然手にとったヴィジュアルブックのページをめくり、心の奥底が満たされるような充実感を得る。必要な情報にいつでもアクセスできる時代にあって、思いがけない出会いがあるから、本は油断できない。

地元っ子の贔屓の店というのは、大抵外れがないと相場が決まっている。訪れたこの日も、お店は賑わっていた。近所に住む若者と旅人、地域で働く人々が緩やかに混ざり合いそれを穏やかに包み込む懐の深さ。コーヒーカルチャーを通じて地域の魅力を発信したいという想いはしっかりと根付いている。

またこのお店には、イタリアンシェフが常駐。生地から作る本格派のナポリピッツァや、パスタのほか、軽食も味わえる。素材には北海道ならではの材料をふんだんに盛り込み、旅人ならずとも新しい発見がある。